特養や老健で医療が受けられる?【医師や看護師など医療体制を比較】

役割は明確!介護保険財政【2022-9】 介護の備え

老健では病院へ通院できないって聞いたけど、特養はどうなの?

持病があるのだけれど、面倒を見てくれるかな?

特別養護老人ホーム(以下、「特養」)では「生活の場」として考えられています。

その結果、医療を提供する施設ではないと考えられています。

一方、介護老人保健施設(以下、「老健」)では医師や看護師が配置されているため、当然に医療行為を行う施設と考えられています。

それらは半分正解で半分誤りです。

高齢者の中には何らかの病気にかかっている方が多くいます。

特に介護が必要な「要介護」レベルの方であればなおさらです。

一定の医療行為は認められていますし、施設内で対処しなければならないこともあります。

厳密にいえば、入所できるかできないかを判断するのは行政側ではなく施設側です。

各施設で基準が異なりますので、本稿では一般的な傾向として特養及び老健の医療体制について説明します。

詳細について知りたい方は、この記事を読んだあと、各施設へお問い合わせください。

この記事を読めば入所先を判断するための材料になります。これから特養や老健の施設を探そうとしている方に読んでいただきたいです。

筆者は長い間、老健で相談業務に携わってきました。その経験をもとにお伝えします。

老健と特養を比較しながら、どちらも一定の医療行為が提供されることを説明します。

人員体制は老健が充実

特養も老健も医師と看護師の配置が義務付けられています。

しかし、特養の医師は非常勤でも許されています。週1~2回往診することで足ります。救急搬送をはじめ具体的な現場の判断は看護師に任されていることが多いです。

一方、老健は常勤の医師が常駐しています。原則として医師が診療の指示をするので他の病院へ通院することは少ないでしょう。しかし、専門の診療科へ相談したい場合は通院もあり得ます。

特養も老健も、施設内で対応できない病状であれば他の病院へ通院します。施設職員が同行します。

<人員体制>特養老健
医師
(往診可)

(常駐)
看護師
〇…有利  ×…不利  △…どちらでもない
(〇×△は筆者から見た主観的な評価です。以下同じ。)

ケアマネ試験で老健について出題されました。受験を考えている方はこちらの記事もご覧ください。

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特養のほうが通院しやすい

老健よりも特養のほうが医療保険の適用範囲が広いです。つまり、特養のほうが気軽に他の病院へ通いやすいと言えます。

老健は医師がかかりつけ医の役割を果たすため、原則として施設の中で診療方針を決定して治療を行います。

薬の処方に関しては、特養では医療保険が使えますが、老健では使えません。老健では原則として薬代を利用者へ請求することができません。通常の利用料の範囲でやりくりする(「まるめ」と言います。)ことになります。

検査に関しては、原則として特養では医療保険が使えますが、老健では使えません。

このように、老健では医師が常駐していることもあり、日常的な健康管理は老健の医師が行うことになっています。そのため、医療保険の適用範囲が特養よりもはるかに制限されています。

           

特養老健
医療保険の適用×

医療保険の適用範囲について次の文献を参考にしました。

内容は難しいかもしれません。

<外部リンク>

「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」の一部改正について

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000918744.pdf

特養に関する記述は2,3,4,7番に記載されています。

老健についてはこちらの書籍を参考にしました。

全国老人保健施設協会編『他科受診の手引き』2023、社会保険研究所

入所しやすいのはどちら?

例外はあるものの、老健では原則として医療保険が適用されません。

医療費をほぼ施設側が負担することになります。

このため、多くの医療行為を必要とする(医療依存度が高い)方が入所する場合、老健入所のハードルが上がります。

待機者は老健よりも特養のほうが多いです。しかし、ある程度の医療行為が必要な状態であれば、あえて特養を検討する方法もありでしょう。

これは老健と比較した場合の話です。特養が全面的に医療行為を受け入れているわけではないので誤解なく!

多くの医療行為が必要とされる場合、利用できるサービスが制限されハードルが上がります。

比較的医療行為をしてもらえるサービスとして「介護医療院」があります。

介護医療院について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

利用者の費用負担は互角

特養は月に13万円程度

老健は月に14万円程度

食費や居住費を含めた概算です。個室を利用した場合は別途かかります。

特養では薬の自己負担が別途発生しますが、保険適用できるので大きな負担にはなりません。

医療行為の必要性に応じて、利用料に大きな差は生じません。

特養老健
保険外実費

費用の比較についてはこちらの記事もご覧ください。

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入所可否に影響するため入所前に確認を!

利用者側から見れば、老健では自己負担なくすべて医療に対応してくれそうな印象です。オトクに思えるのですが、医療費負担の問題が生じます。

特養も、医療保険を使って通院しますが、頻繁に通えば職員にとって大きな労働負担です。

これらが入所の可否に影響を与えます。

繰り返しになりますが、最終的な入所の判断は施設が行います。

利用する方がどのような医療行為が必要か確認のうえ、事前に各施設へ問い合わせるのが良いでしょう。

入所後のトラブルを避けるためにも、必要な医療行為を事前に伝えておくことをお勧めします。

特養の入所基準についてこちらの記事をご覧ください。

老健の入所条件について知りたい方はこちらをご覧ください。

認知症だけれども医療行為は不要な方はグループホームも選択肢に入ります。

こちらの記事をご覧ください。

ケアマネ試験対策として、特養の「家庭的な雰囲気」について記事にしました。

興味がありましたらご覧ください。

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まとめ

まとめると次の通りです。

特養老健
医師
(往診可)

(常駐)
看護師
医療保険の適用×
保険外実費
〇…有利  ×…不利  △…どちらでもない
(〇×△は筆者から見た主観的な評価です。)

人員配置で比較すると老健のほうが充実しています。

医療保険は特養のほうが幅広く認められています。

医療行為の有無によって利用料に大きな差はありません。

利用する方に必要な医療行為があれば、入所前に施設職員へ伝えたうえで、対応可能かどうか事前に確認をすると良いでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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