【期限は3か月ではない】老健の入所条件とは?

老健の入所条件とは? 介護の備え

どんな人が老健に入所するの?

認知症でも入れる?

住民票のある市区町村にしか入所できないの?

老健(介護老人保健施設)に入所できるのは介護保険被保険者で要介護1~5の方が対象です。

認知症の方でも入所できます。ただし、実際に入所できるかどうかは利用する方の症状や老健の受け入れ体制によります。最終的には国が示した基準に沿って、老健側が判断することになります。

利用者の住所地に限らず全国の老健に申し込み可能です。他の市区町村に住んでいるからといって、手続きするうえで不利益はありません。

この記事を読めば老健に入るための条件を知ることができます。老健と特養の違いがわからない方、介護施設を探す中でどの施設へ相談すればよいのかわからない方にお勧めです。また、老健入所を検討している方が判断するための材料になります。

老健で支援相談員として入所相談に関わった筆者がわかりやすくお伝えします。

老健の入所条件は国の基準に沿って各施設で設定

老健は介護保険の被保険者で要介護1~5の認定を受けた方が利用できます。

要支援1や要支援2、認定を受けることができなかった非該当の方は利用できません。

その他老健に入所するための条件は、平成11年厚生省令第40号「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(以下、「運営基準」と呼びます。)に規定されています。

運営基準は国が定めた基準です。

日本国内にある老健はこの基準に沿って運営をしなければなりません。

運営基準5条の2

「介護老人保健施設は、正当な理由なく介護保健施設サービスの提供を拒んではならない。」

まず大前提として…利用者(もしくはその家族)から申し込みがあったら、老健入所を拒んではいけないことになっています。

裏を返せば「正当な理由がある場合」は入所させてもらえないことがあります。

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「正当な理由」とは?

老健側が正当な理由を説明できれば「正当な理由」になります。

例えばこれらが当てはまります。

「正当な理由」例
  • 他の利用者やスタッフに対して暴力をふるってケガを負わせたことがある
  • 人工透析など高額で専門的な医療行為が必要になる
  • 薬の量をコントロールする必要がある
  • 薬代が高い

上記はあくまでも一例です。

医療行為や薬が少なければ入所できる可能性が高まります。

入所の基準はあるものの老健側の裁量が大きい

行政側は「薬代が高額だからと言って入所を拒んではいけない」と老健を指導しています。

薬代は通常の利用料(介護保健施設サービス費)に含まれているためです。どれほど薬にコストがかかっても利用料は定額です。

老健側は薬のコストを抑えるため、入所を拒否しているという実態があります

薬代がいくらかかると高額なのか…月10,000円なのか月100,000円なのか…その肌感覚は施設によって異なります。

私見ですが、現行法令や行政の指導内容が適切なのか?疑問が残ります。

運営方法やルールに課題はあるものの、このような実態に即して運営されているというのが現状です。

老健では一部医療保険が適用されないことも問題です。

詳しくはこちらをご覧ください。

利用者からの申し込みを受けて、最終的な入所の判断をするのは老健です。なぜ行政ではなく老健が判断するのでしょうか?

施設入所は利用者と老健との「契約」になるので両者(利用者と老健)の合意が必要だからです。

結果として、老健の裁量で入所を決定しています

入所拒否の正当理由に該当する場合はどうしたらよいでしょうか?

ご自身で施設探しをするよりも病院の医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センターへ相談するほうが良いでしょう。

入所できないのであれば仕方ありません。老健以外の施設を探すのが良策です。

入院治療が必要でないものの長期療養ができるサービスとして「介護医療院」があります。

老健と比較して医療依存度が高い方が入れそうです。

介護医療院について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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認知症の方が入所できる老健もある

あまり知られていませんが、一部の老健では施設内を「一般棟」と「認知症専門棟」に区分しているところがあります。

「認知症専門棟」は文字通り、認知症と診断された方が利用できます。

認知症専門棟も一般棟と同様、老健側が審査して入所を決定します。

中には、認知症の診断を受けていても軽度と判断され「一般棟」へ入所することもあります。

逆に、暴力行為などの経歴が確認されれば認知症であっても認知症専門棟に入所することができません。(実際には各老健の判断によります)

認知症専門棟に対する過度な期待は禁物です。

一般棟と認知症専門棟の許容範囲に大きな差はありません。

医療行為が不要で、専ら認知症への対応をしてほしい方には「グループホーム」もあります。

興味のある方はこちらの記事もご覧ください。

全国の施設へ申し込むことができる

利用者の住所地に関わらず、日本国内すべての老健に申し込むことが可能です。

特養とは異なり、住所地によって入所順位に影響ありません。

しかし、実際にはご家族が面会に訪れるとか、手続きをすることを考えると、あまりにも遠方の地で入所するのは望ましくありません。

入所後の利便性を考えたうえで申し込みましょう。

特養の入所基準について興味のある方はこちらをご覧ください。

ほかのサービスも検討したい方はこちらをご覧ください。

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老健は3か月以上入所できる

老健というと「3か月までしか入所できない」と先入観を抱く方がいますが、それは昔の話です。現在は3か月を超えて入所を続けることができます。期間に上限はありません

ルールはこうなっています。

運営基準8条4項

「介護老人保健施設は、入所者の心身の状況、病状、その置かれている環境等に照らし、その者が居宅において日常生活を営むことができるかどうかについて定期的に検討し、その内容等を記録しなければならない。」

日常生活を営むことができるかどうか(老健側が)検討する必要はあるのですが、入所期間を3か月に限定する規定はありません。

ここまでがルール上の話です。

実態は?というと、入所期間をできる限り短縮しようと試みる老健があります。

ここから先は介護報酬(つまり利用料)に関係する話です。

国は「在宅復帰・在宅療養支援等指標」というスコアを設定しています。

「在宅復帰・在宅療養支援等指標」スコアに関して難しい説明は省略しますが簡単に説明すると…

老健は「超強化型」「在宅強化型」「加算型」「基本型」「その他」があります。「超強化型」が最もスコア・報酬(利用料)が高く、「その他」が最も低い(安い)です。

報酬が高ければそれだけ経営が安定します。一方でやらなければならない役割(仕事)が増えます。老健側経営陣は人員や運営体制を考慮しハイスコアを目標にします。

スコアを稼ぐには在宅復帰者の人数を増やさなければなりません。しかも在宅復帰者の割合を常に一定数以上に維持しなければなりません。

在宅強化型などハイスコアを狙う老健は、利用者に対し期限(ゴール)を決めて在宅復帰を働きかけます。結果的に入所期間の制限につながるというわけです。

老健の経営方針によって入所期間が決められることもしばしばです。

在宅復帰に力を入れている老健の入所期間は「およそ6か月から1年」が多いです。

入所期間の設定は各老健によりさまざまです。

ケアマネ試験で老健について出題されました。受験を考えている方はこちらの記事もご覧ください。

まとめ

老健に入所できるのは介護保険被保険者で要介護1~5の方です。

そのほか、運営基準に細かい規定がありますが、実態に即して老健側が利用者の入所を判断しています。

認知症の方でも入所できます。ただし、実際に入所できるかどうかは利用する方の症状や老健の受け入れ体制によります。最終的には国が示した基準に沿って、申込を受けた老健側が判断することになります。

利用者の住所地に限らず全国の老健に申し込み可能です。他の市町村に住んでいるからといって、手続きするうえで不利益はありません。ただし、入所後の利便性を考慮したうえで申し込みましょう。

老健は3か月を超えて入所を続けることができます。しかし、実態として在宅復帰に力を入れている老健は入所期間を設けていることが多いです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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