介護サービスは26種類あり、多岐にわたります。
ケアマネジャーはサービスをマネジメントする仕事なので、これらのサービス内容を理解してご利用者へ説明します。
覚えるだけで大変です。
同じショートステイと呼ばれるものであっても、「短期入所療養介護」と「短期入所生活介護」は名称が異なります。
これらの名称の頭に「介護予防」とつければ、要支援者向けのサービスになります。
介護予防サービスを含めれば、全部で54種類にも及びます。
この記事を読めば、混乱しそうなサービス名に惑わされずに、ケアマネ試験問題を解くことができます。
老健で勤務していた筆者が、ケアマネ試験に出題された以下の介護サービスについて解説します。
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 短期入所療養介護(ショートステイ)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院
- 看護小規模多機能型居宅介護
理解が定着しない方、頭の中が整理できない方はぜひご覧ください。
各問について解説を用意しました。必要なところだけご覧ください。
老健で15年間勤務した筆者が、分かりやすくお伝えします。
通所リハビリテーション(デイケア)
問題と正答【2023年-問41】
問題41 指定通所リハビリテーションについて正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 要介護認定を受けた若年性認知症患者は、利用できる。
2. 通所リハビリテーション計画は、介護支援専門員が作成しなければならない。
3. 介護職員は、リハビリテーション会議の構成員になれない。
4. 介護老人保健施設は、提供することができる。
5. 心身機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる。
1・4・5
解説【2023年-問41】
居宅サービスや地域密着型サービスにおいて、サービス名の頭に「指定」と明記してあります。
「指定」とは、都道府県または市町村から運営の許可を受けているという意味です。
介護保険を使うには「指定」を受けた事業所のサービスでなければ保険給付が受けられません。
以下たびたび「指定」の文字が出てきますが、気にしなくても大丈夫です。
本問以下はサービスの内容を問う問題だからです。
各選択肢について簡単に解説します。
1.要介護認定を受けた若年性認知症患者は、利用できる。
〇 正しい
要介護(要介護1~5)の認定を受けることができれば、利用できます。
2.通所リハビリテーション計画は、介護支援専門員が作成しなければならない。
× 誤り
通所リハビリテーション計画はケアプランとは異なります。通所リハのPT・OT・ST(リハビリ職)が作成します。ケアマネは通所リハに配置されていません。
3.介護職員は、リハビリテーション会議の構成員になれない。
× 誤り
会議構成員の職種は限定されません。実務上は、リハビリ職よりも介護職のほうが深く関わっています。介護職員が会議に参加したほうが良いです。
4.介護老人保健施設は、提供することができる。
〇 正しい
老健はリハビリ職必置です。人員基準も似ていることから、通所リハと老健は相性が良いです。
5.心身機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる。
〇 正しい
介護保険の理念に通じます。通所リハは通いのリハビリを提供するサービスです。
介護保険法の理念について、こちらの記事もご覧ください。
短期入所療養介護(ショートステイ)
ショートステイは大きく分けて「短期入所療養介護」と「短期入所生活介護」があります。
本稿では短期入所療養介護の問題を取り上げます。
問題と正答【2023年-問42】
問題42 指定短期入所療養介護について正しいものはどれか。2つ選べ。
1. 検査、投薬、注射、処置等は、利用者の病状に照らして妥当適切に行うものとされる。
2. おむつ代は、利用者が負担するものとされている。
3. 胃ろうがある場合には、利用できない。
4. 日帰りの利用はできない。
5. 短期入所療養介護計画は、既に居宅サービス計画が作成されている場合は、当該計画の内容に沿って作成しなければならない。
1・5
解説【2023年-問42】
問題文に「指定」短期入所療養介護とありますが、前述の通り、特に気にしなくても大丈夫です。
1.検査、投薬、注射、処置等は、利用者の病状に照らして妥当適切に行うものとされる。
〇 正しい
短期入所「療養」介護は老健や病院で提供されるショートステイのことです。したがって、検査、投薬などの簡単な医療行為はサービスの範囲内です。
2.おむつ代は、利用者が負担するものとされている。
× 誤り
おむつ代は基本料金に含まれています(マルメです)。おむつ代として請求されることもありません。短期入所療養介護は居宅サービスであるにもかかわらず、なぜか施設サービスと同じ取り扱いです。
3.胃ろうがある場合には、利用できない。
× 誤り
胃ろうがあるからと言って、利用を拒否されません。ショートステイに限らず、他のサービスも同様です。
4.日帰りの利用はできない。
× 誤り
短期入所は宿泊サービスですが、、、なんと日帰り利用することもできるのです!その場合、時間ごとに料金が計算されます。
5.短期入所療養介護計画は、既に居宅サービス計画が作成されている場合は、当該計画の内容に沿って作成しなければならない。
〇 誤り
居宅ケアマネが作成した居宅サービス計画書と関連させる必要があります。短期入所療養介護計画は短期入所療養介護のケアマネが作成します。
おむつ代について、厳密に言えば、「利用者が実費負担することはない」が正しい表現です。つまり、「サービス利用料に含まれている」という解釈です。
ショートステイ事業所が負担するわけではありません。利用者が負担することは誤りではないと思います。本問では他の選択肢の正誤を判断し、「×」としました。
介護老人保健施設(老健)
問題と正答【2023年-問44】
問題44 介護老人保健施設について正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 入所者は、病状が安定し入院治療の必要がない要介護3以上の認定を受けた者である。
2. 保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めなければならない。
3. 口腔衛生の管理体制を整備し、各入所者の状態に応じた口腔衛生の管理を計画的に行わなければならない。
4. 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を置かなければならない。
5. 看取り等を行う際のターミナルケア加算は、算定できない。
2・3・4
解説【2023年-問44】
介護老人保健施設は施設サービスに分類されます。
介護老人福祉施設(特養)や介護医療院との違いを整理しておくと、得点しやすいです。
1.入所者は、病状が安定し入院治療の必要がない要介護3以上の認定を受けた者である。
× 誤り
「要介護3以上」に入所制限しているのは、介護老人福祉施設(特養)です。
2.保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めなければならない。
〇 正しい
保健医療サービス(医師・看護師・リハビリ職)と福祉サービス(介護)との連携が必要です。
3.口腔衛生の管理体制を整備し、各入所者の状態に応じた口腔衛生の管理を計画的に行わなければならない。
〇 正しい
近年は口腔衛生が健康に大きな影響を与えることが明らかになっています。これを受けて、老健では口腔衛生管理体制が「義務化」されました。歯科医師や歯科衛生士と連携しています。
4.理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を置かなければならない。
〇 正しい
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の「いずれか」を定員に応じて配置します。
5.看取り等を行う際のターミナルケア加算は、算定できない。
× 誤り
老健はターミナルケア加算を算定することができます。看取りのニーズは高まっています。
介護老人保健施設の入所条件や医療体制について記事にしました。
詳しくはこちらをご覧ください。
介護医療院
問題と正答【2023年-問45】
問題45 介護医療院について適切なものはどれか。2つ選べ。
1. 住まいと生活を医療が支える新たなモデルとして創設された。
2. 開設者は、医療法人でなければならない。
3. 療養床には、Ⅰ型療養床とⅡ型療養床がある。
4. 併設型小規模介護医療院の入所定員は、25人以下である。
5. 療養室入所者1人当たりの床面積は、5.0㎡以上とされている。
1・3
解説【2023年-問45】
1.住まいと生活を医療が支える新たなモデルとして創設された。
〇 正しい
医療依存度の高い被保険者が増加したため、生活の場が必要となり介護医療院が創設されました。
2.開設者は、医療法人でなければならない。
× 誤り
医療法人が圧倒的多数ですが、一般社団法人や公益財団法人による開設もあります。
3.療養床には、Ⅰ型療養床とⅡ型療養床がある。
〇 正しい
Ⅰ型療養床は病院が提供します。Ⅱ型療養床は介護老人保健施設が提供します。Ⅰ型のほうが重症者向けで職員の人数が多いです。
4.併設型小規模介護医療院の入所定員は、25人以下である。
× 誤り
介護保険で言う「小規模」サービスの定員はおよそ19名前後です。
5.療養室入所者1人当たりの床面積は、5.0㎡以上とされている。
× 誤り
正しくは8.0㎡以上です。老健の基準と合わせています。
5.0㎡だとベッドと車いすしか入りません。狭すぎます。
介護医療院についてこちらの記事もご覧ください。
介護医療院公式サイトはこちらです。 (外部サイトへ移動します)
看護小規模多機能型居宅介護
最後は、「看護」小規模多機能型居宅介護に関する問題です。
略して「看多機(かんたき)」と呼ばれています。
もともと「複合型サービス」が存在していたのですが、イメージチェンジしました。
問題と正答【2023年-問43】
問題43 指定看護小規模多機能型居宅介護について正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 居宅で生活している要支援者も利用できる。
2. 看護小規模多機能型居宅介護計画の作成に当たっては、利用者の多様な活動が確保されるものとなるように努めなければならない。
3. 看護サービスの提供開始時は、主治の医師による指示を口頭で受けなければならない。
4. サテライト型指定看護小規模多機能型居宅介護事業所の登録定員は、18人以下である。
5. 看護小規模多機能型居宅介護費は、月単位で設定されている。
2・4・5
解説【2023年-問43】
1. 居宅で生活している要支援者も利用できる。
× 医療を必要とする方向けのためか?要介護1~5の方が利用できます。要支援1・2の方は利用できません。
2. 看護小規模多機能型居宅介護計画の作成に当たっては、利用者の多様な活動が確保されるものとなるように努めなければならない。
〇 正しい
通い・宿泊・訪問という柔軟なサービス提供が可能なので、多様な活動ができるはずでしょう……という国の思惑が聞こえてきそうです。
3. 看護サービスの提供開始時は、主治の医師による指示を口頭で受けなければならない。
× 誤り
医師の指示書を文書で得る必要があります。指示書がなければ看護はできません。
ちなみに訪問看護も同様です。
4. サテライト型指定看護小規模多機能型居宅介護事業所の登録定員は、18人以下である。
〇 正しい
サテライト型の場合は登録定員「18人以下」、本体型(サテライトではない型)は「29人以下」です。なお、1日当たり利用できる人数も、それぞれ上限が設定されています。
5. 看護小規模多機能型居宅介護費は、月単位で設定されている。
〇 正しい
通い・宿泊・訪問を組み合わせたサービスです。
個別に計算すると煩雑になってしまうのでしょうか?……看多機や小多機の利用料は月額で算定されます。サブスクです。
要支援者(介護予防)が利用できないサービスは次の通りです。
おさらい記事はこちら
以下のリンクから、お好きな記事へアプローチすることができます。
ぜひご活用ください。
まとめ
介護保険サービスに関する問題を解きました。
今回取り上げたのは次の5つのサービスです。
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 短期入所療養介護(ショートステイ)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院
- 看護小規模多機能型居宅介護
ケアマネジャーとして働くと、数多く存在するサービスについて、ご利用者へ説明する場面があります。
あらかじめ知識を身に着けておくと、自信をもってご利用者へ説明できるようになります。
この記事がお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。