準備して災害時に備える~総合問題~【介護福祉士試験2023年-問123~125】

準備して災害時に備える~総合問題~【介護福祉士試験2023年-問123~125】 介護福祉士試験

災害が発生したとき、施設はどのように対応しているの?

災害が発生したとき、大きく分けて2つの対応を求められます。

  • 利用者への対応
  • 施設運営の対応

介護福祉士試験では、主に「利用者への対応」について出題されます。

利用者対応がメインです。

障害の特性を理解し、利用者本位の対応をすれば正解です。

ここでは併せて「施設運営の対応」も理解しておきましょう。

施設運営は以下の手順で行います。

施設運営の対応
  • 計画を立案します。
  • 実際に訓練を行います。
  • 訓練を振り返り、研修を実施します。
  • 計画を見直し改訂します。
  • ※①~④のサイクルを繰り返します。

総合問題では、他の科目で出題されるテーマが複合的に出てきます。

筆者は老健で長年勤務し、施設運営に携わりました。

非常災害対策計画を作成し、避難訓練を計画実施しました。

本試験の問題を通じて災害対策への理解を深めたいと思います。

問題と正答【2023年-問123~125】

総合問題では、1つの事例につき3問出題されます。

少し長いのですが取り組んでみましょう。

事例で利用者の特性を確認したうえで問題を解いてください。

各問の直後に正答を記載しています。

次の事例を読んで,問題 123 から問題 125 までについて答えなさい。

〔事 例〕

Eさん(35 歳,男性)は,自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)があり,V障害者支援施設の生活介護と施設入所支援を利用している。

Eさんは,毎日のスケジュールを決め,規則や時間を守ってプログラムに参加しているが,周りの人や物事に関心が向かず,予定外の行動や集団行動はとりづらい。コミュニケーションは,話すよりも絵や文字を示したほうが伝わりやすい。

Eさんが利用するV障害者支援施設では,就労継続支援事業も行っている。災害が起こったときに様々な配慮が必要な利用者がいるため,施設として防災対策に力を入れている。また,通所している利用者も多いので,V障害者支援施設は市の福祉避難所として指定を受けている。

〔事例はここまで〕

問題 123 Eさんのストレングス(strength)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 行動力があり,すぐに動く。

2 自分で決めたことを継続する。

3 新しいことを思いつく。

4 コミュニケーション力が高い。

5 いろいろなことに興味がもてる。

正答 2

問題 124 V障害者支援施設では定期的に災害に備えた避難訓練を行っている。Eさんの特性を考慮して実施する避難訓練に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 災害時に使用する意思伝達のイラストを用意する。

2 避難生活を想定して,食事等の日課を集団で行えるようにする。

3 予告せずに避難訓練を行う。

4 Eさんの避難訓練は単独で行う。

5 避難を援助する人によってEさんへの対応を変える。

正答 1

問題 125 V障害者支援施設が,災害発生に備えて取り組む活動として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 事前に受け入れ対象者を確認しておく。

2 災害派遣医療チーム(DMAT)と支援人員確保契約を結ぶ。

3 職員の役割分担は,状況に応じてその場で決める。

4 要配慮者のサービス等利用計画を作成する。

5 要配慮者に自分で避難するように促す。

正答 1

次の章で詳しく解説します。

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施設の災害対策は具体的

最近日本でも地震、津波、洪水、竜巻など自然災害が多発していますね。

特に施設に入所している方々は自力で避難することが難しいです。

昨今では実際に被害が出た施設もありました。

スタッフが欠員することもあります。

行政機関は施設に対して、災害発生時の避難体制や組織体制を整備するよう義務付けています。

① 計画を立案

ひな形を参考にして、十数ページに及ぶ冊子を作ります。

  • 消防計画
  • 非常災害対策計画
  • 避難確保計画(災害発生危険区域に立地している施設が作成)

施設ごとに事情が異なるので、ひな形は参考程度にします。

仕上がりは各施設によって異なります。

作成する書類が増えました…

② 訓練を行う

  • 非常災害訓練
  • (感染症訓練)→コロナ対策です

リアルな訓練を求められています。

筆者が勤務していた施設では、非常災害訓練のとき、実際にサイレンを鳴らして訓練しました。不安になってしまう利用者もいました。業務への負担はそれなりに大きいです。

でも必要なことですね。

③ 訓練を振り返り、研修を実施する

毎年定期的に実施します。

研修を実施した後に訓練を行ってもOKです。

研修内容を記録に残します。

④ 計画を見直し改訂する

訓練や研修の内容を踏まえて計画をバージョンアップします。

①~④を繰り返す

このバージョンアップを繰り返し、かつ全職員が共通認識して災害時に動けるようになれば、災害に強い施設だと言えるでしょう。

このサイクルに終わりはありません…

事務作業は増えるばかりです…

施設スタッフは大変です。

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解説

普段は1問1答ですが、今回は3問あります。

簡単に解説します。

次の事例を読んで,問題 123 から問題 125 までについて答えなさい。

〔事 例〕

Eさん(35 歳,男性)は,自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)があり,V障害者支援施設の生活介護と施設入所支援を利用している。

Eさんは,毎日のスケジュールを決め,規則や時間を守ってプログラムに参加しているが,周りの人や物事に関心が向かず,予定外の行動や集団行動はとりづらい。コミュニケーションは,話すよりも絵や文字を示したほうが伝わりやすい。Eさんが利用するV障害者支援施設では,就労継続支援事業も行っている。

災害が起こったときに様々な配慮が必要な利用者がいるため,施設として防災対策に力を入れている。また,通所している利用者も多いので,V障害者支援施設は市の福祉避難所として指定を受けている。

〔事例はここまで〕

問題 123 Eさんのストレングス(strength)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 行動力があり,すぐに動く。

2 自分で決めたことを継続する。

3 新しいことを思いつく。

4 コミュニケーション力が高い。

5 いろいろなことに興味がもてる。

  • Eさんは自ら「毎日のスケジュールを決め、規則や時間を守ってプログラムに参加している」ので、「自分で決めたことを継続する」力があります。
  • ストレングスは「強さ」ですが、「得意」「長所」でもあります。
  • 得意なことに目を向けている選択肢2が正解です。

正答 2

問題 124 V障害者支援施設では定期的に災害に備えた避難訓練を行っている。Eさんの特性を考慮して実施する避難訓練に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 災害時に使用する意思伝達のイラストを用意する。

2 避難生活を想定して,食事等の日課を集団で行えるようにする。

3 予告せずに避難訓練を行う。

4 Eさんの避難訓練は単独で行う。

5 避難を援助する人によってEさんへの対応を変える。

  • Eさんとのコミュニケーションは,「話すよりも絵や文字を示したほうが伝わりやすい」のですから、「災害時に使用する意思伝達のイラストを用意する」が正解です。

正答 1

問題 125 V障害者支援施設が,災害発生に備えて取り組む活動として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 事前に受け入れ対象者を確認しておく。

2 災害派遣医療チーム(DMAT)と支援人員確保契約を結ぶ。

3 職員の役割分担は,状況に応じてその場で決める。

4 要配慮者のサービス等利用計画を作成する。

5 要配慮者に自分で避難するように促す。

  • V障害者施設は施設入所支援を提供していますが、同時に生活介護のご利用者を受け入れています。ベッドは施設入所定員分のみです。受け入れできる人数に限りがあります。すべてのご利用者について避難先を決めておく必要があります。
  • 本問は消去法で解いたほうが良い問題です。

正答 1

問題123ストレングスについて、こちらの記事をご覧ください。

問題125選択肢2ですが、DMATとの契約は不要です。災害があれば日本全国の施設へ駆けつけます。

DMATは災害発生直後の急性期から活動する専門的な医療チームです。厚生労働省が整備しています。

関心のある方はこちらのサイトをご参照ください。(外部リンク)

厚生労働省 DMAT事務局

避難訓練は施設だけではなく、居宅サービスも実施する義務があります。

ケアマネ試験の過去問になりますが、こちらの記事もご覧ください。

2023年介護福祉士試験の記事をまとめました。

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まとめ

災害発生時の対応について総合問題を通して学習しました。

災害が発生したとき、大きく分けて2つの対応を求められます。

  • 利用者への対応
  • 施設運営の対応

介護福祉士試験では、主に「利用者への対応」について出題されます。

利用者対応がメインです。

障害の特性を理解し、利用者本位の対応をすれば正解です。

一方、施設運営は次の手順で行います。

施設運営の対応
  • 計画を立案します。
  • 実際に訓練を行います。
  • 訓練を振り返り、研修を実施します。
  • 計画を見直し改訂します。
  • ※①~④のサイクルを繰り返します。

このサイクルを繰り返し、かつ全職員が共通認識して災害時に動けるようになれば、災害に強い施設だと言えるでしょう。

以上、参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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