ショートステイは家族が休むためにあるの?
それって利用者本位とは言わないよね?介護保険使えるのはおかしい!
短期入所生活介護(通称「ショートステイ」)は、利用者が施設に短期間宿泊するサービスです。
主な目的は在宅介護するご家族の休養です。
介護者の休養のことを「レスパイト」と呼びます。
介護保険は利用者がサービスを選択して利用するのが基本です。
しかし、ショートステイに限って言えば、少し事情が異なるようです。
利用者だけではなく、家族のためのサービスだと厚生労働省は明言しています。
この解釈にケアマネは葛藤します…
この記事を読めば、短期入所生活介護の運営基準について理解することができます。
ケアマネ試験対策はもちろん、実務でも役に立ちます。
介護業界15年の筆者が、過去問を解きながら分かりやすくお伝えします。
問題と正答【2023年-問53】
短期入所生活介護に関する問題です。
問題の直後に正答を記載しています。
問題53 介護保険における短期入所生活介護について正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 指定短期入所生活介護は、利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。
2. 指定短期入所生活介護事業所に介護支援専門員の資格を有する者がいる場合、その者が短期入所生活介護計画のとりまとめを行うことが望ましい。
3. 夕食時間は、午後5時以前が望ましい。
4. 食事の提供に関する業務は、指定短期入所生活介護事業者自らが行うことが望ましい。
5. いかなる場合も、利用定員を超えてサービスを行うことは認められない。
1・2・4
家族のためのショートステイ
短期入所生活介護は短期入所療養介護とともに、通称「ショートステイ」と呼ばれています。
介護保険法8条9項では、短期入所生活介護を次の通り定義しています。
「短期入所生活介護」とは居宅要介護者について、…(中略)…施設に短期間入所させ、当該施設において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことをいう。
介護保険法8条9項
一方、厚生労働省は短期入所生活介護を次の通り定義しています。
短期入所生活介護とは、利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、利用者(要介護者等)が老人短期入所施設、特別養護老人ホーム等に短期間入所し、当該施設において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものである。
令和5年7月10日社会保障審議会
介護給付費分科会資料
介護保険法の文言に、厚生労働省が肉付けした解釈をしています。
両者を合わせて解釈すると、短期入所生活介護の目的は次の2つです。
介護保険は利用者のためのサービスを謳っています。
実に介護保険法8条9項に「家族」の記載はありません。
ケアマネとしてプランを作成するとき、「利用者本位」という印籠を掲げて、ご利用者の周囲を取り巻くさまざまな意見の衝突を仲介し、そして調整します。
しかし、ショートステイに限っては「利用者本位」は通用しません。
ご利用者だけではなく、「ご家族のため」でもあるのです。
いわゆる「レスパイト」目的の利用も認められています。
むしろ、ご利用者の心身機能維持は「名目」です。
実際には介護疲れで困っているご家族も多いのは事実です。
ショートステイはご家族に配慮したサービスなのでしょう。
筆者が困るのは次のような場面です。
筆者は、このような場面に何度も出会っては葛藤を感じます。
「誰のためのサービスだ!?」と……
筆者はショートステイを否定する立場ではありません。
肯定しているわけでもありません。
ただ、このサービスに葛藤が付いて回るのです…
制度上は、利用者だけではなく家族のためのサービスです。
これを押さえておけば試験対策は大丈夫です。
食事提供は事業者が責任をもって実施
ショートステイは主に特別養護老人ホームで一体的にサービス提供しています。
厨房や食堂などの設備が整っています。
食事の提供は委託せず、事業者が自ら行うことが望ましいとされています。
万が一、食中毒が発生したときに、責任所在をはっきりさせるためですね。
実際には調理を委託することも可能です。
また、夕食の提供時間は18時以降です。
根拠となる通知のリンクはこちらです。
比較的平易な文章なので、ご一読ください。
事務連絡平成12年3月1日厚生省老人保健福祉局「基本食事サービス費について」
https://www.wam.go.jp/wamappl/bb05kaig.nsf/0/4a57b96fc540532c4925689a003b877a/$FILE/kihonshokuji.PDF
(外部リンク)
利用定員オーバーは原則タブーだが例外あり
短期入所生活介護の利用者の定員はあらかじめ、都道府県へ申請した人数が上限となります。
定員は原則としてオーバーしてはいけません。
しかし、例外があります。
例外として定員オーバーが認められるのは、次のような場合です。
ケアマネ試験では、やむを得ない事情について、詳しく問われることはありません。
例外があることだけ押さえましょう。
解説
問題53 介護保険における短期入所生活介護について正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 指定短期入所生活介護は、利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。
〇 正しい
厚生労働省は、上記の通り「家族のため」と述べています。
2. 指定短期入所生活介護事業所に介護支援専門員の資格を有する者がいる場合、その者が短期入所生活介護計画のとりまとめを行うことが望ましい。
〇 正しい
ほとんどの事業所にケアマネがいます。
なお、ケアマネがケアプランのとりまとめを行う「義務」はありません。
3. 夕食時間は、午後5時以前が望ましい。
× 誤り
午後6時以降です。
4. 食事の提供に関する業務は、指定短期入所生活介護事業者自らが行うことが望ましい。
〇 正しい
調理・配膳などの食事提供を、事業者自らが行うのが望ましいです。実際には業者委託も可能です。
5. いかなる場合も、利用定員を超えてサービスを行うことは認められない。
× 誤り
災害時、虐待発見時は利用者を保護しなければなりません。例外的に定員オーバーすることは許されます。
正答 1・2・4
おさらい記事はこちら
以下のリンクから、お好きな記事へアプローチすることができます。
ぜひご活用ください。
まとめ
短期入所生活介護の目的と運営基準についてお伝えしました。
短期入所療養介護は介護保険法では利用者の機能維持を謳っています。
一方で、厚生労働省は「家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない」と明言しています。
食事提供は事業者が自ら実施しますが、業者委託することも可能です。
利用定員は厳守しなければいけません。
しかし、災害時や虐待発見時など、保護するために一時的に定員超過することが認められます。
この記事でお楽しみいただけましたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。