地域共生社会は全員参加型の社会【介護支援専門員試験2023年-問2】

地域共生社会は全員参加型の社会【介護支援専門員試験2023年-問2】 介護支援専門員試験

地域共生社会を作るのは市町村の役割でしょ?

国民の義務はないの?

地域共生社会の法律上の実施主体は市町村です。

地域住民、市町村、社協、民生委員などが地域で連携できるよう、市町村が調整役を務めます。

地域共生社会の輪の中に、当然ながら地域住民がいます。

地域共生社会は全員参加型です。

法律条文には「義務」と「努力義務」があります。

~しなければならない = 義務

~するよう努めなければならない = 努力義務

引っ掛からないよう、問題文を最後まで注意深く読みましょう。

この記事を読めば、地域共生社会の大まかなイメージをつかむことができます。

介護支援専門員試験の問題のクセを理解することができます。

試験に合格し、老健で実務経験のある筆者が分かりやすく試験問題を解説します。

問題と正答【2023年-問2】

2023年-問2は地域福祉と地域共生社会の2点について尋ねていますが、

地域共生社会に関する問題がメインです。

問題2 地域福祉や地域共生社会について正しいものはどれか。3つ選べ。

1.市町村は、包括的な支援体制を整備するため重層的支援体制整備事業を実施しなければならない。

2.市町村は、市町村地域福祉計画を策定するよう努めるものとする。

3.地域共生社会とは、子供・高齢者・障害者などすべての人々が地域、暮らし、生きがいをともに創り、高め合うことができる社会のことである。

4.介護保険法に基づく地域支援事業等を提供する事業者が解決が困難な地域生活課題を把握したときは、その事業者が自ら課題を解決しなければならない。

5.高齢者と障害児・者が同一の事業所でサービスを受けやすくするための共生型サービスは、介護保険制度と障害福祉制度の両方に位置付けられている。

2・3・5

それぞれの選択肢について、簡単にポイントをまとめました。

解法のポイント

1.重層的支援体制整備事業は市町村に課された「義務」?「努力義務」?

2.市町村地域福祉計画を策定するのは市町村か?都道府県か?そして、計画作成は「義務」か?「努力義務」か?

3.地域共生社会の定義が分かれば選択肢3を選ぶことができます。

4.事業者が「自ら」課題を解決できなかったらどうするのか?

5.共生サービスは介護保険と障害福祉で、同時にスタートした経緯があります。

次章では地域共生社会について触れたいと思います。

地域共生社会の旗振り役は市町村

はじめに、地域共生社会とは…

制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会を指しています。

厚生労働省「地域共生社会のポータルサイト」より引用

(外部リンク)

地域共生社会のポータルサイト|厚生労働省
厚生労働省の地域共生社会の実現に向けたポータルサイトです。地域共生社会に関する情報や、厚生労働省の取り組みについて掲載しています。

2023年の介護福祉士試験でも地域共生社会について出題されています。

詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

市町村は重層的支援体制整備事業を実施するよう努めることになっています。(社会福祉法106条の3)

地域共生社会とは何をするのかをイメージするため、念のため内容を列記します。

重要ではないので読み飛ばしても結構です。

重層的支援体制整備事業の内容をまとめると次の通りです。

支援の対象者は大きく分けて「高齢者」「障害者」「子どもと親」「生活困窮者」です。

重層的支援体制整備事業(社会福祉法106条の4)
  • 生活実態把握(高齢者)
  • 虐待防止及び権利擁護(高齢者・障害者)
  • 専門家によるケアプランの検証(高齢者)
  • 職業訓練のあっせん(生活困窮者)
  • 地域住民が抱える地域生活課題に関する相談に応じ、情報提供や助言をすること(高齢者・障害者・子どもと親・生活困窮者)

社会福祉法では「一体的かつ重層的に整備する事業…」(106条の4 2項)と謳っています。

この事業を市町村が行うことが「できる」ということです。(「できる」の真意については後述します)

例えば、「貧困」「孤立」「虐待」「難病」などの生活課題に対して、従来は専門職が専門的な立場でそれぞれ意見を言っていました。

これらの課題に対して、「これからは情報共有して協力して(重層的に)解決していこうよ」というのが「重層的支援体制整備事業」です。

あまり難しく考えず、「みんなで生活課題を解決する事業」とイメージできればOKです。

地域共生社会は全員参加型

地域共生社会は「脱・タテ割り」「支えたり、支えられる」という思想のもと、チームで生活課題に取り組みます。

法律では市町村に課された使命のように明文化されています。

しかし理念としては、誰かが陣頭指揮をとるのではなく、全員「横並び」なのです。

そのほうが、地域の生活課題は解決しやすいというのが国や専門家の見解なのでしょう。

繰り返しますが、地域共生社会は全員参加型であり、参加メンバー「横並び」です。

もちろん、このメンバーの中には地域住民、つまり国民が含まれます。

地域住民も主体的に参加することが求められています。

「義務」と「努力義務」は意味が違う

法律全般に言えることですが、条文には「義務」と「努力義務」があります。

~しなければならない = 義務

~するよう努めなければならない = 努力義務

「~できる」という文言も見受けられます。

「~できる」は「してもしなくてもいい」と言い換えられます。緩い規定です。

前述した重層的支援体制整備事業を市町村が行うことが「できる」のがその例です。

ケアマネ試験では「義務」と「努力義務」の区別を問われます。

混同しないよう注意しましょう。

また、過去問を解くときは、問題文を最後までよく読んでから回答しましょう。

努力義務について、問題40で少しだけ出題されています。

こちらの記事もご覧ください。

 

解説

地域共生社会について、イメージできたでしょうか?

具体的な定義や役割を理解しなくても、イメージさえつかめれば正解できます。

各選択肢を見てみましょう。

問題2 地域福祉や地域共生社会について正しいものはどれか。3つ選べ。

1.市町村は、包括的な支援体制を整備するため重層的支援体制整備事業を実施しなければならない。

× 誤り

社会福祉法106条の3によると、包括的支援体制整備は「義務」ではなく、「努力義務」です。

また、同法106条の4によると、重層的支援体制整備事業を「行うことができる」とあります。「義務」ではありません。

※「義務」ではないのですが、市町村が旗振り役になっています。

2.市町村は、市町村地域福祉計画を策定するよう努めるものとする。

〇 正しい

法107条によると、市町村地域福祉計画の策定は「義務」ではなく、「努力義務」です。

※全体の約1割に相当する180市町村では未策定です。

3.地域共生社会とは、子供・高齢者・障害者などすべての人々が地域、暮らし、生きがいをともに創り、高め合うことができる社会のことである。

〇 正しい

全員参加型です。関係者であれば誰でもメンバーになれます。

4.介護保険法に基づく地域支援事業等を提供する事業者が解決が困難な地域生活課題を把握したときは、その事業者が自ら課題を解決しなければならない。

× 誤り

「…その事業者が自ら…」が誤りです。

地域共生社会はメンバーが「重層的に」生活課題の解決を図ります。

※事業者が「解決困難だ」と言っているのですから、自ら解決するのは困難です。

5.高齢者と障害児・者が同一の事業所でサービスを受けやすくするための共生型サービスは、介護保険制度と障害福祉制度の両方に位置付けられている。

〇 正しい

共生型サービスが始まった2018年に、両制度が同時に改正されました。

正答 2・3・5

おさらい記事はこちら

以下のリンクから、お好きな記事へアプローチすることができます。

ぜひご活用ください。

まとめ

地域福祉と地域共生社会について過去問を解説しました。

地域共生社会の法律上の実施主体は市町村です。

地域住民、市町村、社協、民生委員などが地域で連携できるよう、市町村が調整役を務めます。

地域共生社会の輪の中に、当然ながら地域住民がいます。

地域共生社会は全員参加型です。

法律の条文には「義務」と「努力義務」があります。

市町村地域福祉計画の策定は、「義務」ではなく「努力義務」です。

この記事がお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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