「介護保険審査会」と「介護認定審査会」の違い【介護支援専門員試験2023年-問16】

「介護保険審査会」と「介護認定審査会」の違い【介護支援専門員試験2023年-問16】 介護支援専門員試験

介護保険審査会って何をするところ?

介護認定審査会との違いは?

介護保険審査会は都道府県が設置しています。

介護保険の認定結果や保険料決定といった市町村が行った処分を審査する場所です。

構成メンバーは市町村職員、被保険者、公益の代表委員(学識経験者のこと)です。

一方、介護認定審査会は市町村が設置しています。

要介護区分の最終的な認定(二次判定)を行うところです。

市役所が主催していますが、市職員だけではなく学識経験者も出席しています。

介護認定審査会が出した認定結果に対して、被保険者が不服に思うならば、上層機関である介護保険審査会へ審査請求を行うことができます。

実務上、審査請求をすることは稀です。

認定区分に不服があれば、区分変更申請をすることが多いです。

この記事を読めば、介護保険審査会と介護認定審査会の役割について理解することができます。

ケアマネ試験に合格し実務経験のある筆者が、2023年の本試験問題を挙げて分かりやすく説明します。

問題と解説【2023年-問16】

介護保険審査会と審査請求に関する問題です。

問題の直後に正答を載せています。

問題16 介護保険審査会への審査請求が認められるものとして正しいものはどれか。2つ選べ。

1.介護支援専門員の資格に関する処分

2.指定居宅サービス事業者の指定の取消しに関する処分

3.財政安定化基金拠出金への拠出額に関する処分

4.要介護認定に関する処分

5.被保険者証の交付の請求に関する処分

4・5

解法のポイント

1.介護支援専門員の資格を認定しているのはどこか?

2.確かに指定取消しは行政機関の仕事だが…介護保険審査会に指定取消し権限があるのか?

3.財政安定化基金って介護保険の貯金箱のようなもの。

4.要介護認定は保険給付に関わる業務です。

5.被保険者証交付請求も保険給付に関する業務です。

介護保険審査会は処分を見直すところ

介護保険審査会について、介護保険法では第12章「審査請求」の章で出てきます。

介護保険審査会は「審査請求」について話し合われるところなのです。

審査請求とは、つまり「行政処分に対して不服だと声を上げること」です。

話し合われる内容は…

  • 保険給付に関する処分(被保険者証の交付請求、要介護(要支援)認定を含む)
  • 保険料
  • 徴収金(財政安定化基金拠出金、介護給付費・地域支援事業支援納付金、納付金の延滞金を除く)

審査する内容は限定的です。

これを知っているかどうかで得点に影響してきます。

試験問題作成者に好かれそうな問題です…

一方、介護認定審査会は被保険者資格の「認定」を行います。

保険審査会は認定審査会が出した結果をひっくり返す権限があります。

よって、介護保険審査会が上、介護認定審査会が下という上下関係になります。

  • 介護保険審査会は上層機関なので都道府県に設置
  • 介護認定審査会は被保険者証を発行している市町村に設置

介護保険審査会と介護認定審査会の役割を区別しましょう。

国や都道府県、市町村の上下関係について、こちらの記事をご覧ください。

審査請求とは

市町村など公的機関が市民に対して行う「行政処分」はとても強い権限になります。

よって、市民(被保険者)の反対意見を受け付けるよう法律で規定されています。

介護保険に限らず、労災や雇用保険など、さまざまな保険制度に同様の規定があります。

審査請求は市民に下された行政処分に対する「不服申立て」です。

審査請求を受け付けると、介護認定審査会が下した判定が正しかったのかどうかを審査します。

この審査を行うのが介護保険審査会です。

介護保険審査会は「行政処分に関する裁判所」みたいです。

東京都福祉局のウェブサイトが審査請求について簡潔に説明していましたので、引用します。

審査請求では、区市町村が行った行政処分の取消しを求めることができます。介護保険審査会は、処分に違法または不当な点がないかを審査し、審査請求に理由があると認めたときは、裁決により処分の全部又は一部を取り消し、区市町村が改めて処分をやり直すことになります。(したがって、要介護認定に関する審査請求において、介護保険審査会が独自に認定をやり直すものではありません。)

東京都福祉局ウェブサイトより引用(外部リンク)

(外部リンク)

審査請求が(見事に?)正当だと認められた場合、市町村は見直さなければなりません。(裁判で言う「差戻し」です。)

やり直した審査は前回と同じ結果になることはありません。

介護保険審査会で話し合われた内容を踏まえ、前回とは異なる認定結果が出ることになります。

ここまで、審査請求についてお伝えしましたが、実務上「審査請求」の制度を利用することは稀です。

審査に多くの時間が費やされるからです。

例えば、要介護1の予測に反して要支援2の認定結果が出た場合、

ケアマネとしては一旦認定結果を受け入れたうえで、新たに区分変更申請を被保険者へ提案するのが現実的です。

プラン作成や利用サービスを考えると、あまり審査に時間をかけていられないのです。

解説

改めて問題を解いてみます。

問題16 介護保険審査会への審査請求が認められるものとして正しいものはどれか。2つ選べ。

1.介護支援専門員の資格に関する処分

× 誤り

「被保険者」の資格について審査しますが、「介護支援専門員」の資格について審査する権限はありません。

2.指定居宅サービス事業者の指定の取消しに関する処分

× 誤り

指定取消しは指定する権限がある機関、つまり都道府県や市町村が直接処分します。

3.財政安定化基金拠出金への拠出額に関する処分

× 誤り

徴収金について審査しますが、財政安定化基金拠出金、介護給付費・地域支援事業支援納付金、納付金の延滞金は対象外です。

4.要介護認定に関する処分

〇 正しい

保険給付に関する内容なので正解です。

5.被保険者証の交付の請求に関する処分

〇 正しい

保険給付に関する内容なので正解です。

正答 4・5

選択肢3が「正しいかも…」と迷ってしまいそうです。

介護保険審査会は徴収金の審査を取り扱っているのですが、財政安定化基金は対象外なのです。

おさらい記事はこちら

以下のリンクから、お好きな記事へアプローチすることができます。

ぜひご活用ください。

まとめ

介護保険審査会と介護認定審査会の違いについてお伝えしました。

介護保険審査会が都道府県に設置された上層機関です。

介護認定審査会が市町村に設置された下部機関です。

問題を解きながら知識を深めるのが良いでしょう。

でもハマりすぎないように注意です!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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