介護保険の破綻をくい止めろ!給付は節約すべし【介護支援専門員試験2023年-問4】

介護保険の破綻を食い止めろ!保険給付は節約すべし【介護支援専門員試験2023年-問4】 介護支援専門員試験

被保険者であれば介護サービスを自由に使えるのだ

ケアマネがどんなサービスを使うか決めるんだよね?

介護保険の財源のうち、2分の1は被保険者が支払います。

しかし、残る2分の1は税金から支払われています。

年齢制限はあるにせよ、被保険者であれば当然に介護保険サービスを利用する権利があります。

ただし、利用者本位だからと言って好きなように利用することはできません。

サービスの組み合わせや回数など様々な制限があります。

介護保険の専門家であるケアマネジャーと利用者が相談して、サービス内容や回数などを決めます。

決定した内容が正しいかチェックする機能もあります。

この行為を「適正化」と言います。

近年では介護保険財政が悪化しているため、制度の適正化やチェックが厳格になっています。

この記事を読めば、保険給付が切り詰められていることを理解できます。

介護支援専門員試験に一発合格し、老健の施設ケアマネをしていた筆者が分かりやすくお伝えします。

Care License Collegeではケアマネ試験問題の解説をしています。

ちょっとした読み物として勉強の合間にご覧ください。

問題と正答【2023年-問4】

介護保険の理念を理解しつつ、保険給付がどのように行われているのかを問う問題です。

さっそく問題を見てみます。

問題4 介護保険法第2条に示されている保険給付の基本的考え方として正しいものはどれか。3つ選べ。

1.要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われなければならない。

2.被保険者の置かれている環境に配慮せず提供されなければならない。

3.可能な限り、被保険者の有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。

4.医療との連携に十分配慮して行われなければならない。

5.介護支援専門員の選択に基づき、サービス提供が行われなければならない。

1・3・4

各選択肢について解き方のポイントをまとめました。

解法のポイント

1.自立した日常生活を送るのが介護保険の目的でした。

2.被保険者の置かれた環境が分からないと、どんなサービスが必要なのか判断できません。

3.介護保険法の条文そのままです。よく見聞きする文言です。

4.高齢者は病気にかかりやすいです。医療との連携が求められているのが介護保険の特徴です。

5.ケアマネが複数の選択肢を用意しますが、サービスを選択するのは利用者です。

次章から介護保険給付の実情について見ていきましょう。

給付はできるだけ抑えたい【国のお財布事情】

介護保険給付費は年々増加しています。

理由はサービス利用者数の増加と、介護度の重度化です。

2021年の介護給付費は総額11兆2,838億円 でした。

(2020年度比2,296億円増、2.1%増)

厚生労働省「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)のポイント」

https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/21/dl/r03_point.pdf (外部リンク)

厚生労働省の資料を見ればわかるのですが、毎年2%ずつ増加しています。

高齢者人口が増えたことによる自然増と考えられます。

利用者が増えれば費用も膨らみます。

介護保険の財源は2分の1が保険料、2分の1が税金です。

支出が増えれば税金から支出する金額も増えます。

国は何とか支出を抑えたいと苦慮します。

そこで、「適正化」が講じられるのです。

介護保険財政について、こちらの記事もご覧ください。

他の制度との給付調整が行われることがあります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

請求誤りや給付の無駄をそぎ落とす【適正化】

サービスを提供した事業者は、国民健康保険団体連合会(以下、「国保連」と呼びます)へ保険請求します。

請求を受けた国保連は保険給付が適正であるか、金額をチェックします。

これとは別に。事業者を監督する都道府県や市町村は、事業所が不正を行っていないか、数年に1回の頻度で事業所を訪問しチェックします。これが運営指導です。

3年に1回介護報酬改定が行われます。これにより単価が改訂され請求額が変わります。

加算が新設され、変更されるのも介護報酬改定のタイミングです。

こうして、定期的に適正化の機会が設けられています。

国は介護保険財政を健全に保つためあらゆる施策を講じて、事業者や自治体に対し無駄使いを排除するよう求めています。

国や自治体の役割について、こちらの記事もご覧ください。

国保連と似ている機関として、社会保険診療報酬支払基金があります。

試験問題を解くうえで、しっかりと役割の違いを理解する必要があります。

社会保険診療報酬支払基金について、こちらの記事もご覧ください。

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共同連帯の理念を掲げて適正化

介護保険法1条と4条2項に「国民の共同連帯の理念」が定められています。

「国民一人一人が助け合って介護保険制度を設け維持しましょう」という意味です。

この「共同連帯の理念」の「名目で」適正化が実施されます。

名目は後付けかもしれません。

実は介護保険財政は黒字です。

何を慌てて適正化をしなければならないのか?

将来赤字になることが予測されるからです。

とにかく無駄なく、大事にお金が使われることを目的にしています。

事業者が不正を行うことがあれば厳罰が待っています。

・支払われた保険給付費を国へ返金する「返戻」

・悪意のある事業者に対して「業務停止処分」や「指定取り消し」(廃業)

国民が保険料を滞納すればサービス利用を差し止めることもあります。

これだけシビアにするのも、介護保険が保険料だけではなく、税金も使われていることに由来しています。

何よりも、国民が頼りにしている介護保険制度を将来にわたって維持する責任が、「国」に対して課されているからです。

国民の期待がかかった(と言ってよいかわかりませんが…)介護保険制度を破綻させるわけにはいかないのです。

解説

前章では論点が理念にまで及んでしまいましたが、介護保険財政の基本的な性格は理解できたと思います。

将来来るべき赤字を予測し、早い時期から財布のひもを締めて切り詰めているのです。

これらを踏まえて問4の解説です。

問題4 介護保険法第2条に示されている保険給付の基本的考え方として正しいものはどれか。3つ選べ。

1.要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われなければならない。

〇 正しい

介護状態が軽減されれば保険給付額も少なく済みます。

2.被保険者の置かれている環境に配慮せず提供されなければならない。

× 誤り

ケアマネがよく考えてサービスを計画しなければ、余計な出費になりかねません。

3.可能な限り、被保険者の有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。

〇 正しい

介護保険の理念(法1条)に謳(うた)っているとおりです。

4.医療との連携に十分配慮して行われなければならない。

〇 正しい

高齢者は病気にかかりやすいので、介護と医療は切っても切れない関係にあります。

(法2条2項)

5.介護支援専門員の選択に基づき、サービス提供が行われなければならない。

× 誤り

利用者の選択に基づくサービスが提供されなければなりません。(法2条3項)

正答 1・3・4

おさらい記事はこちら

以下のリンクから、お好きな記事へアプローチすることができます。

ぜひご活用ください。

まとめ

介護保険が効率的に運営されるため余計な出費を抑えることに主眼が置かれています。

「国民の共同連帯の理念」を名目に適正化が行われます。

すべては介護保険制度を将来にわたって維持するためです。

この記事が試験合格を目指す方にとって役に立つことができれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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