訪問看護は労災や健康保険を使って受けることができるね
介護保険を使ってもいいのかなぁ?
訪問介護や訪問看護など、介護保険の一部サービスは他制度にも存在します。
どの制度を利用するかはそれぞれの法律で決められています。
利用者が選択できるものではありません。
重複しないよう、どちらかを支給停止することを「給付調整」と言います。
二重に支給されることはありません。
ここでは2023年介護支援専門員試験で出題された問題を挙げて、「労災」、「生活保護」、「障害福祉」と介護保険との支給順位を各々説明します。
この記事を読めば介護保険と類似した制度の給付調整について理解することができます。
老健で請求業務を行っていた筆者が分かりやすくお伝えします。
ケアマネ試験対策をしている方、勉強の合間にぜひご覧ください。
問題と正答【2023年-問7】
さっそく問題を見てみましょう。
どんな問われ方をしているかが分かります。
問題の直後に正答があります。
問題7 介護保険と他制度との関係について正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 労働者災害補償保険法の療養給付は、介護保険給付に優先する。
2. 労働者災害補償保険法の介護補償給付は、介護保険の給付に相当する給付が受けられる限りにおいて、介護保険に優先する。
3. 介護保険の訪問看護は、原則として、医療保険の訪問看護に優先する。
4. 生活保護の被保険者は、介護保険給付を受給できない。
5. 障害者総合支援法の給付を受けている障害者は、要介護認定を受けることができない。
1・2・3
本問で出てくる「他制度」とは…
- 労働災害補償保険 = 労災
- 医療保険 = 健康保険、国民健康保険、協会けんぽ
- 障害総合支援法 = 障害福祉サービス
それぞれ、法律に基づいて給付調整されます。
黒字の制度が優先される
介護保険給付は切り詰められています。
その理由は高齢化や保険料収入減少により将来にわたって、赤字になることが確実視されているからです。
しかし、現状は黒字です。財務状況は良好と判断されています。
その反面、医療保険は組合健保が消滅するなど財務状況が悪化しています。
生活保護や障害福祉も税金が多く投入されています。
なるべく税金を使わないよう施策が講じられます。
一方で労災は保険事故が少ないためか「黒字」です。介護保険よりも余裕があります。
筆者の独断で制度に順位をつけるとすれば、
決して両制度を同時に併給できるわけではありません。
どの制度を使うか、利用者が自由に選択することもできません。
給付調整については、法律で決められています。
介護保険財政の仕組みについて、こちらの記事もご覧ください。
保険給付について、こちらの記事もご覧ください。
各制度と介護保険を具体的に比較してみましょう。
労災 VS 介護
労災には「介護補償給付」があり、実際に介護にかかった費用が支給されます。
ただし、介護保険施設、障害者支援施設などに入所している場合や入院中は支給されません。
自宅で生活していた人が、職場での事故により突然介護が必要になった場面が想定されます。
労災と介護保険を比較すると、労災が優先(先に支給)され、介護保険は後回しです。
労災で支給されない部分については介護保険を利用することができます。
例えば、老健に入所する場合、労災を使うことはできませんが、介護保険を使って入所することができます。
労災・介護保険のどちらかを利用することになります。
両方受給(併給)することはできません。
医療 VS 介護
各種医療保険(協会けんぽ・組合健保・国保)と介護保険は同時に使用することができません。
原則として介護保険が優先して支給されます。
給付調整される例として、訪問看護や訪問リハビリが挙げられます。
- 診断名が異なる
- 利用する時期が異なる
といった事情があれば医療保険が支給されることもあります。
医療保険が優先されるのは「例外」です。
医療保険財政は赤字です。介護保険財政のほうが余裕あります。
生活保護 VS 介護
生活保護と介護保険は組み合わせて活用することができます。
生活保護費を使って介護保険サービスを利用します。
これは厳密に言うと併給とは言えません。
介護保険と生活保護費の併給が可能だという見解もありますが、試験問題を回答するうえで「併給不可」と判断して差し支えありません。
生活保護制度に介護扶助がありますが、これは介護保険を補うものなので、二重に給付を受けられるという意味ではありません。
生活保護受給者は一部負担金も支払うことが困難なため、生活保護費から支出するしかありません。
最低限度の生活を保障する生活保護法の趣旨に沿って全面的に保障されます。
生活保護費は100%税金で賄われています。
生活保護について厚生労働省資料が参考になります。
詳しく調べたい方はご覧ください。
厚生労働省「生活保護制度の概要等について」令和3年4月27日
https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/000771098.pdf (外部リンク)
障害 VS 介護
障害福祉サービスと介護サービスとでは、実に似ているサービスが存在します。
原則として介護保険が優先(支給)されます。
施設入所は独自の制度なので重複しません。
「障害VS介護」は利用者が選択できる唯一の例外パターンと言えます。
重ならない範囲で支給される点で、「②医療VS介護」の取り扱いと似ています。
障害福祉に比べて介護保険のほうが財務状況は良いので、介護保険から優先して支給されます。
解説
ケアマネ試験では介護保険が他制度と競合した場合、どちらが優先されるのかが問われます。
多くの場合、介護保険が優先されます。
ただし様々なケースで例外があるのが、ややこしいところです。
少し紛らわしいのですが、問題を解きながら理解を深めましょう。
問題7 介護保険と他制度との関係について正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 労働者災害補償保険法の療養給付は、介護保険給付に優先する。
〇 正しい
そもそも療養給付は介護保険に存在しない給付です。労災から支給されます。
2. 労働者災害補償保険法の介護補償給付は、介護保険の給付に相当する給付が受けられる限りにおいて、介護保険に優先する。
〇 正しい
労災の財政は裕福です。
3. 介護保険の訪問看護は、原則として、医療保険の訪問看護に優先する。
〇 正しい
医療保険は赤字です。できる限り介護保険から支給されます。
4. 生活保護の被保険者は、介護保険給付を受給できない。
× 誤り
例えば、生活保護受給者であっても介護保険施設に入所することができます。
※ どちらかの受給資格が停止または抹消されることはありません。
5. 障害者総合支援法の給付を受けている障害者は、要介護認定を受けることができない。
× 誤り
障害サービスを利用している障害者も、要件を満たせば介護保険の被保険者になることができます。
利用者が選択できる唯一の例外です。併給はできません。
※ 4と同様、どちらかの受給資格が停止または抹消されることはありません。
正答 1・2・3
おさらい記事はこちら
以下のリンクから、お好きな記事へアプローチすることができます。
ぜひご活用ください。
まとめ
他制度との給付調整についてお伝えしました。
ざっくり優先順位をつけると、以下の通りです。
例外がありますが、深堀りすると底なし沼にはまってしまいます。
大まかに順位を理解するだけで十分です。給付調整に関する問題を正解することができます。
この記事が参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。