高齢者が自宅で生活することが難しくなったとき、介護施設で専門職による介護を受けることができます。
「介護施設といってもいろいろあってどのように探したらよいかわからない。」
「それぞれの施設の特徴や費用を知りたい」
施設を探すにも何から始めたらよいかわからないという方もいらっしゃると思います。
自宅以外の生活の場は大きく分けて次の5種類です。
「介護施設」と言うと厳密には特別養護老人ホームと介護老人保健施設を言いますが、「自宅以外の生活の場所」という意味でとらえると、主に上記5種類になります。これらをまとめて介護施設と考えて問題ありません。
介護保険の被保険者はこれらのサービスを利用することができます。
詳しい入居条件や費用について説明します。
介護保険制度についてご存じでない方もこの記事を読めば介護施設の種類の違いを理解することができます。
日本全国にある多数の施設からご本人に適した1つを探すときに役立ちます。
筆者が介護老人保健施設で勤務した経験をもとに、わかりやすくお伝えします。
介護施設の種類
施設とはいっても微妙に役割が違います。その微妙な違いがあるゆえに、申し込みをしても入所を認めてもらえず、手あたり次第探してしまうことがあります。できればこのような徒労は避けたいです。
施設の役割と費用の概算をまとめると次の表のとおりです。
対象 | 概算費用 (月額) | 特徴 | |
特別養護老人ホーム | 要介護3~5 | 13万円 | 生活の場 |
介護老人保健施設 | 要介護1~5 | 14万円 | リハビリの場 |
有料老人ホーム | 要支援1~2・要介護1~5 | 23万円~ | 生活の場 |
グループホーム | 要支援2・要介護1~5 かつ 認知症の方 | 21万円 | 認知症ケア |
サービス付き高齢者向け住宅 | 60歳以上 または 要支援1~2・要介護1~5 | 15万円 + 介護費 | 住まい |
本当に施設を探してよいのか判断に迷う方はこちらをご覧ください。
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費用
ご家族が施設選びに関わるとき、最も気になるのは費用だと思います。
ほぼすべての介護施設で介護保険を使えます。所得や保有資産額に応じて1割・2割・3割の自己負担で利用できます。介護保険被保険者証とともに発行される「負担割合証」を見れば、その方の自己負担額がわかります。
介護保険制度は国が作ったものですが、実際にサービスを提供しているのは国ではなく、社会福祉法人や医療法人、株式会社などです。
これらが自治体から指定を受けて決められたルールに沿って運営しています。
運営費は介護保険料と税金から支払われています。
費用を決めるとき施設(上記社会福祉法人など)が自治体に届け出る仕組みです。
つまり、施設が自由勝手に決められるわけではないということです。
施設によって差がつくのは「個室室料」や「食費」くらいでしょう。
施設で料金の説明を受けたときに、他の施設と比較して「なんか高いな~」と感じたら、料金表を比較して、「どこが違うのか」「違う理由はどこにあるのか」を明らかにすると良いです。疑問があれば各施設の相談員へ質問し、納得してから申し込みましょう。
これらの施設とは対照的に、有料老人ホームは上乗せしてサービス料金を設定しています。自費になりますが追加サービスを組み合わせることができます。その分費用は高くなります。施設によって料金体系は異なります。総じて有料老人ホームは割高だと考えて間違いありません。
特養と老健の医療費比較について興味のある方はこちらをご覧ください。
ユニット型は全室個室でスタッフも限定【特養・老健】
介護施設では大人数の利用者を少人数のスタッフで介護するイメージがあります。「ユニット型」とはその短所を克服するためのシステムです。
特別養護老人ホームと介護老人保健施設はそれぞれ「従来型」と「ユニット型」に区分されます。
最近ではユニット型の施設が増えています。
利用者10人ごとにフロア内を区画して共同生活室(リビング)を設置します。これをユニットと呼びます。お部屋はすべて個室です。ユニットごとに専属の介護スタッフが配置されます。
ユニット型のメリットは少人数ケアができることです。利用者の性格をよく理解したスタッフがそばにいるので安心感があります。
完全個室なのでプライバシーも守られます。
デメリットは個室料の負担が増えることです。月額費用19万円くらいで利用できます。上記の表では従来型の料金を示しています。比較すると月額6万円くらいの差……大きいです。
また、集団生活であることに変わりないので、自由度で比較すれば有料老人ホームに劣ります。
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特別養護老人ホーム入所の順番は施設側が決める
2022年の全国の特養入所待機者は27万人です(厚生労働省プレスリリース「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」)。2014年は待機者52万人でした。だいぶ減った(混雑が緩和した)と言えますが、依然として人気を保っています。
特養入所の優先順位はどのように決められるのでしょう?
要介護3~5の方が対象になるのはわかります。
しかし、申し込み順ではありません。
国や自治体が順番を決めているわけでもありません。
実際には施設が裁量で決めています。
介護者の有無、住まいの有無などを点数化して、緊急に対応する必要がある方を優先しています。このように施設ごとに基準やルールを策定して入所順位を決定しています。
ご利用者の生活環境が変化したときは申し込みをしている施設へこまめに報告しておくとよいでしょう。
何年も待機している方であっても突然順番が回ってくるかもしれません。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
老健の入所期間に決まりはない
介護老人保健施設(老健)というとリハビリをする施設であるため入所期間が決められていると考えられていますが、実際には入所期限を設けることはありません。
ただしこれは「法律上」期限を定めていないだけです。
実際には老健の入所期間について、施設ごとに方針があります。
「2年を目安とする」「6か月以内に在宅復帰をする」など目標(条件とも言えますが)を設定される場合があります。
もちろん期限を設定しない施設も多くあります。
説明をしてくれたスタッフへ質問し、いつまで入所できるかを確認したうえで申し込むと良いでしょう。
利用者側も「自宅へ戻って一人暮らしをする」「特養に入所できるまで利用する」などゴールを考えておくと、利用する目的が明確になり施設生活が有意義になるでしょう。
老健の入所条件について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
有料老人ホームは待たずに入居できるが高額
一言で有料老人ホームといっても様々な種類があります。
自費サービスもあります。
施設によって入居一時金が必要になる場合があります。
費用は高額になるので、申し込み前に念入りに確認することをお勧めします。
施設独自の料金設定をしている場合がありますので特に慎重に対処します。
収入を国民年金に頼っている方が利用するのは非常に厳しいです。
病院退院後の行き先に困っている方は、介護付き有料老人ホームを「一時利用」する方法もあります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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グループホームに入居できるのは認知症と診断された方だけ
グループホームは認知症に特化した施設です。
自宅に近い環境をイメージして作られています。
要介護5であったとしても認知症の診断がなければ入居できません。
認知症であったとしても要支援1の方は入居できません。
グループホームは地域密着型サービスです。
利用者が住んでいる市区町村内のグループホームの中から選んで申し込むことになります。
例外はあるものの、原則として他の市区町村のグループホームに入居することはできません。
このようにグループホームを候補とする場合、細かい条件があります。
こちらの記事もご覧ください。
入居したくてもできないことがあります。
早めに介護度やグループホーム所在地を確認して、もしも条件に当てはまらない場合は他のサービスの検討に移りましょう。
条件に当てはまったとしても部屋が空いていないこともあります。問い合わせる際にまずは空室状況を確認すると良いでしょう。空室状況の確認は他の施設サービスでも同じことが言えます。
サービス付き高齢者向け住宅は賃貸住宅
サービス付き高齢者向け住宅は通称「サ高住」と呼ばれています。
「高齢者向け」なのですが、原則として介護サービスが付帯しません。
「一般型」と「介護型」があります。
一般型は賃貸住宅そのもの。家賃や水道光熱費がかかります。室内清掃や入浴介助が必要な場合は訪問ヘルパーを利用します。介護費用が別途かかります。
介護型は介護サービス費用をある程度含んでいますが、受けられる介護サービスのうち「どこまでが費用に含まれているのか」、「追加費用が発生しないか」を申し込み前に確認する必要があります。
介護型のサ高住は有料老人ホームと同じです。
介護サービスの利用状況にもよりますが、月額40万円かかることもあります。
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介護医療院という選択肢もある【番外編】
今回取り上げませんでしたが、「介護医療院」という施設があります。
長期療養が必要な方を対象とした、病院と老健の中間のようなサービスです。
費用は月額14万円ほどです(自己負担1割。減免制度や個室を利用しない場合)。
介護医療院について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
まとめ
介護施設はその種類と費用に違いがあります。
施設の役割を理解したうえで施設探しをするのが効率的です。
また、次のような特徴があります。
施設探しにお役立ていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。