介護保険施設とは介護施設の総称です。
介護保険施設は次の通り分類されます。
「地域密着型介護老人福祉施設」や「特定施設入居者生活介護」など介護保険施設ではないのに「~施設」と称しているサービスがあります。
とても紛らわしいです…
介護老人保健施設でケアマネジャーをしていた筆者が介護保険施設について解説します。
この記事を読めば、「介護保険施設」を正しく理解することができます。
介護保険施設とその他サービスとの分類ができるようになり、実務においても役に立ちます。
2022年に実施された介護支援専門員試験の問題7を取り上げて説明します。
問題と正答【2022年-問7】
介護保険施設を知るうえで、本問は参考になります。
さっそく問題を解いてみましょう。
問題のすぐ下に正答を記載しています。
問題7 介護保険施設について正しいものはどれか。2つ選べ。
- 介護老人福祉施設の入所定員は、50人以上でなければならない。
- 介護老人保健施設の管理者となる医師は、都道府県知事の承認を受けなければならない。
- 2024(令和6)年3月31日までは、新たに指定介護療養型医療施設の指定を受けることができる。
- 入所者ごとに施設サービス計画を作成しなければならない。
- 地域密着型介護老人福祉施設は、含まれる。
正答 2・4
選択肢「5」の地域密着型介護老人福祉施設は施設ではないので誤りです。
「施設」と名乗っているのになぜ介護保険施設に含まれないのでしょうか?
次の章で詳しく解説します。
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施設だけれど施設ではない
地域密着型介護老人福祉施設は「地域密着型」サービスです。
正式名称は「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」です。
厚生労働省が作成したサービス一覧表はこちらです。
引用元:厚生労働省「介護保険制度の概要」2021年5月(https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf)2023年9月1日ダウンロード
地域密着型介護老人福祉施設は桃色の「地域密着型介護サービス」にいます。
オレンジ色の「施設サービス」(=介護保険施設のこと)に分類されていないので、やはり介護保険施設ではありません。
入所定員29名以下の特養です。特養の「縮小版」のようです。
日常生活のお世話をするところです。サービス内容は特養と同じです。
名称は一見、施設サービス(介護保険施設)に見えますが、分類上は異なるサービスです。
地域密着型介護(予防)サービスは軽度の方も利用でき少人数で家庭的、一方の施設サービスは比較的重度である要介護(介護給付)の方が利用するサービスと考えましょう。
ほかにもあります「施設ではない施設」
さきほどの一覧表に、ほかにも「施設ではない施設」がひそんでいます。
「特定施設入居者生活介護」は「有料老人ホーム」のことです。
名称に「施設」とありますが、施設サービスではありません。
サービス名 | 分類 |
特定施設入居者生活介護 | 居宅介護サービス |
介護予防特定施設入居者生活介護 | 介護予防サービス |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 地域密着型介護サービス |
「グループホーム」も施設と誤解する方がいますが、施設サービスではありません。
グループホームのことを「認知症対応型共同生活介護」といいます。
サービス名 | 分類 |
認知症対応型共同生活介護 | 地域密着型介護サービス |
介護予防認知症対応型共同生活介護 | 地域密着型介護予防サービス |
グループホームの入居基準や費用について、「介護の備え」というブログで詳しく書いています。
興味のある方はこちらもご覧ください。
サービス名称だけで判断せず、全体像を把握すると良いでしょう。先ほど引用した一覧表が便利です。ぜひご活用ください。
細かいところも出題されるのでややこしいですね…
ほかの選択肢の正誤が判断できれば簡単に解けるかもしれません。
せっかくですので、ほかの選択肢も見てみましょう。
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介護保険施設についてさらに詳しく解説
問題7 介護保険施設について正しいものはどれか。2つ選べ。
- 介護老人福祉施設の入所定員は、50人以上でなければならない。
- 定員の下限はありません。 →誤り
- 施設を経営するうえで「50人」は採算のとれる最低ラインの定員と言われています。(余談です)
- 介護老人保健施設の管理者となる医師は、都道府県知事の承認を受けなければならない。
- 老健の管理者(施設長)は医師である必要があります。 →正しい
- 管理者になるには、都道府県へ履歴書のような経歴が分かるものを提出して承認を受けます。
- 2024(令和6)年3月31日までは、新たに指定介護療養型医療施設の指定を受けることができる。
- 介護療養型医療施設は廃止予定です。新たに認可してもらって施設を開設することはできません。 →誤り
- そうは言っても、なかなか廃止されず、かれこれ10年くらいに渡って延び延びになっています。
- 介護医療院が創設された現在も、介護療養型医療施設は存続しています。施設入所者の医療ニーズが多いことの表れでしょう。
- ちなみに、「指定介護療養型医療施設」の「指定」という言葉は「指定された」という意味なので、気にせず読み飛ばしても大丈夫です。
- 入所者ごとに施設サービス計画を作成しなければならない。
- 居宅サービス、施設サービスに関わらずケアプランが必要です。 →正しい
- 施設には専任のケアマネジャーがいます。
- 地域密着型介護老人福祉施設は、含まれる。
- 地域密着型介護老人福祉施設は「介護保険施設(施設サービス)」ではなく「地域密着型介護サービス」です。 →誤り
正答 2・4
介護保険施設についてもっと知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
2022年介護支援専門員試験の介護支援分野についてまとめました。
こちらの記事もご覧ください。
まとめ
介護保険施設とは介護保険の「施設サービス」のことです。
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設で構成されています。
地域密着型介護老人福祉施設や特定施設入居者生活介護は「介護保険施設」ではありません。
名称が紛らわしいので注意が必要です。
介護保険施設について少し知識を深めることができたでしょうか?
ケアマネジャー試験に役立てていただければ幸いです。