成年後見制度は法律が難しくてよく分からない!
やさしい解説をお願いします!
成年後見制度は判断能力が低下した障害者や高齢者が対象です。
ご家族や社会福祉士などの専門職が、対象者に代わって法律行為をする制度です。
法律行為とは文字通り、「法律に規定された行為」なのですが、主に契約や財産処理など、本来ご本人でなければできない行為のことです。
例えば、契約書に印鑑を押すことは法律行為です。
成年後見制度はご本人の判断能力に応じて、「後見」「保佐」「補助」という3つの類型があります。
後見が最も援助を必要とする方向けで、補助は少し援助してもらえれば大丈夫な方向け、保佐はその中間です。
家庭裁判所が類型を決定し、成年後見人(保佐人・補助人)を選任します。
成年後見人の仕事は、大きく分けて2つの仕事があります。
「身上保護」と「財産管理」です。
成年後見人は被後見人に代わって法律行為を行うので、責任重大です。
有資格者かつ一定の研修を修了した人が担うことのできる専門的な職業です。
この記事を読めば、成年後見制度の概要と成年後見人の仕事を理解することができます。
社会福祉士成年後見人の筆者が分かりやすくお伝えします。
問題と正答【2023年-問58】
ケアマネ試験に出題された問題を解き、成年後見への理解を深めたいと思います。
問題の直後に正答を記載しています。
よろしければ、問題を解いた後、答え合わせをしてください。
次章から詳しく解説します。
問題58 成年後見制度について正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 成年後見人の職務には、身上保護(身上監護)と財産管理が含まれる。
2. 後見開始の申立は、本人の所在地を管轄する地方裁判所に対し行わなければならない。
3. 成年後見制度の利用の促進に関する法律では、国の責務が定められている。
4. 法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、後見と補助の2類型に分かれている。
5. 成年後見制度利用促進基本計画では、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりが必要とされている。
1・3・5
成年後見制度の3類型
成年後見制度はご本人の判断能力に応じて、段階的に「後見」「保佐」「補助」という3つの類型に分類されます。
3つの類型に大まかな基準はあるものの、ご本人の類型を最終的に決定するのは家庭裁判所です。
申立人やご本人が希望を伝えることはできますが、決定権はありません。
国は率先して成年後見制度を普及させています。
その主な理由は高齢化にあります。
寿命が延びて、借り家の賃貸契約をする必要がある、家を売却する必要がある、詐欺にあわないように財産を守る必要がある、などなど。
判断能力が低下しても、安心して過ごせる社会をつくる義務が、国に対して課されているのです。
成年後見人の職務2つ
成年後見人の仕事は次の2つです。
身上保護はかつて、身上監護と呼ばれていました。
ご本人の生活を見守る仕事です。
見守ると言っても、常時付き添う必要はありません。
例えば、施設入所中の方に定期的に面会して、施設職員から様子を聞く、ケアプランの説明を受ける、支援内容に質問や意見を伝えることです。
ご本人が言葉に言い表すことができないときにサポート(または代弁)することも身上保護です。
身上保護には、虐待防止の役割もあります。
高齢者虐待防止法について、こちらの記事もご覧ください。
財産管理はご本人の預貯金及び自宅不動産などを管理することです。
管理と言っても、例えば、家の周りの草むしりをするのは業務に入りません。
草むしりが必要であれば、成年後見人はご本人の預貯金から支出して、業者へ清掃を依頼します。
家庭裁判所に監督される成年後見人
成年後見人はご本人に代わって法律行為をする権限を与えられます。
ご本人に及ぼす影響が大きいです。
よって、成年後見人がきちんと仕事をしているかを監督する機能が必要です。
成年後見人を監督する役割を担っているのが、家庭裁判所です。
家庭裁判所は成年後見人の選任申立(申込)を受けて、裁判を開き成年後見人を選任します。
選任した責任があるので、きちんと仕事をしているか監督します。
成年後見人は1年に1回、所定の様式に沿って報告書を作成し、家庭裁判所へ報告します。
成年後見人の任務が終了するまで監督は続きます。
成年後見人の職務は公共的な性格を持っています。
解説
先ほどの問題をもう一度見てみましょう。
各選択肢の直後に正答と解説を記載しています。
問題58 成年後見制度について正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 成年後見人の職務には、身上保護(身上監護)と財産管理が含まれる。
〇 正しい
身上保護と財産管理の2つが成年後見人の職務です。
2. 後見開始の申立は、本人の所在地を管轄する地方裁判所に対し行わなければならない。
× 誤り
地方裁判所ではなく、家庭裁判所です。
※ 読み飛ばさないよう、選択肢をよく読んで回答しましょう。
3. 成年後見制度の利用の促進に関する法律では、国の責務が定められている。
〇 正しい
成年後見制度は国が旗振り役を務めています。
法律の冒頭(1条及び4条)に国の責務が定められています。
4. 法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、後見と補助の2類型に分かれている。
× 誤り
「保佐」という類型も存在します。
※ 援助量が多い順に並べると、後見→保佐→補助です。
5. 成年後見制度利用促進基本計画では、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりが必要とされている。
〇 正しい
成年後見人一人でできることは限られています。ネットワークが必要です。
正答 1・3・5
おさらい記事はこちら
以下のリンクから、お好きな記事へアプローチすることができます。
ぜひご活用ください。
まとめ
成年後見制度は、判断能力が低下した障害者や高齢者が対象です。
ご家族や社会福祉士などの専門職が、対象者ご本人に代わって法律行為をする制度です。
成年後見制度はご本人の判断能力に応じて、「後見」「保佐」「補助」という3つの類型があります。
後見が最も援助を必要とする方向けで、補助は少し援助してもらえれば大丈夫な方向け、保佐はその中間です。
成年後見人の仕事は、大きく分けて2つの仕事があります。
「身上保護」と「財産管理」です。
成年後見制度と成年後見人の業務に就いてお伝えしました。
成年後見制度を理解するために知っておきたいことはほかにもあります。
Care License Collegeでは、今後も成年後見制度に関する記事をアップします。
もしも時間があれば、インターネットや書籍を使って、読者の方ご自身で調べるのも良いでしょう。
社会福祉士などの資格を取り、一定の研修を修了すれば成年後見人として働くことも可能です。
興味があれば資格取得にもぜひチャレンジしましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。